杜を管理していく上でのマスタープラン
青梅の杜の管理に関し、2001年6月、森林の地権者の委託を受けた青梅の杜「21世紀計画」策定委員会によっ て、「青梅の杜21世紀計画報告資料」が作成され、青梅の杜の管理、造林、保全活 動に関わる人々に対し提示されました。
森林、自然保全の分野で日本を代表する良心的知性とも言える検討委員方によって作 成されたその文書は、高度に洗練され偏りが無く、これからの日本の森林管理のある方向性を鮮やかに、かつ、明らかに指し示す貴重なもので、青梅の杜で森林に関わる活動をする全ての人々にとってのかけがえのない拠り所となってきました。
同資料公表以後の 青梅の杜の森林管理は、基本的に同資料の精神に則り行なわれてきました。この「資 料」こそが青梅の杜を管理していく上でのマスタープランであるといえるのです。

「青梅の杜21世紀計画」の概要
(1).自然との関わりを体験できる森に
1.自然の霊と交わる
2.里山をとり戻す
3.林業を再生させる
4.自然から学ぶ
(2).杜づくりの100年のプロセス
1.100年以上の長期的視野で進める。
2.ゾーン分けした計画図は作らない。
3.思考錯誤を繰り返しながら森を育てていく。
4.森づくりを行うにあたっては、外部の生物を持ち込むことはしない。
(3).3つの要素と3つのモザイク
青梅の杜の整備は、3つの要素(単位)と3つのモザイクの組み合わせで進める。
1.整備の要素は、面、線、点の3つ。
照葉樹林、落葉樹林、人工林の3つの林(面)が健康で美しい状態で存在し、必要な場所に施設(点)があり、林や施設をトレイル(線)がむすんでいる姿を目指す
2.3つのモザイクという考え方を取り入れて整備を進める
ⅰ)ベースモザイク
人工林に広葉樹林が混じるモザイク状になった、整備の土台となる現状の森。
ⅱ)アンカーモザイク
比較的長く、同じ状態を保つ部分
100年以上かけて育て、維持する照葉樹林、落葉樹林、人工林の3つの林などがこれにあたる。
ⅲ)シフティングモザイク
比較的小さな面積で変化させる部分。
環境学習等の舞台となる。
炭焼き、自然観察などの活動フィールド
人為的に自然を撹乱したフィールド
(4).遊べる森、変化する森をめざす
かつて私たちは自然を身近なものとして、親しみ、自然の慈しみや季節の移り変わりを実感してきた。一方、現代の子ども達は、自然と触れ合う機会も減り、たまに自然公園や、山や川に出かけても、様々な制約、禁止事項にがんじがらめに縛り上げられ、自由に生き物や自然に触れることもままならない、という悲しい状況におかれている。 ここ青梅の杜では、自然の中で学び遊べる環境を提供することを、使命のひと つと考え、禁止事項は最小限にとどめ、以下に記す「ガイドライン」を尊守し、 必要なルールを身につけてもらった上で、訪れる人々、子ども達がのびのびと 遊び学べるフィールドを目指していく。
(5).ガイドライン
1.思想における指針
1.多様な環境と豊かな生物相をもつ、里山の自然を目指す。
2.スピリチュアリティをバックボーンに据える。
3.いろいろなつながりを重視する。
4.「青梅の杜」とその周辺地域の歴史、文化を尊重する。
5.試行錯誤を繰り返して、よりよいものを目指す。
6.遊び心を持って楽しく取り組む。
2.整備・管理における指針
1.外来生物を持ち込まない。植林には地元の種子、実生を用いる。
2.生息環境を整えることを主とし、生物が自然に集まるのを待つ。
3.人工増殖や放流は最小限にとどめ、自然の更新を待つ。
4.単一種の集中的な植樹は避ける。植物園のようにしない。
5.小規模な実験で結果を確かめてから、本格的な取組みを行なう。
6.人工物はなるべく周辺地域に設置する。
7.こまめに記録をとり、データベースとして残す。
8.リサイクルの観点から、域内の生産物をできるだけ活用する。
3.利用者に対する指針
1.原則として全域を開放するが、利用者はトレイルを歩いてもらう。
2.子どもの採集は認める