落葉広葉樹林、照葉樹林、人工林が入り混じりながら、バランス良く配置された杜を目指しています。
その杜を構成するのは以下のような林達です。
(1).林業経営の経済的基盤を支える針葉樹人工林
針葉樹人工林を毎年、約2haの面積を皆伐し、植林をおこないます。170haの面積を設定し85年で一巡するローテーション管理を行ないます。毎年、一定規模の皆伐、植林を行うことによりバランスの取れた林齢構成の森林を目指します。皆伐され植林された人工林は、植林後5年程度は、草原性のチョウの為に好適な環境を提供することが明らかにされています。かつての里山で、常に草原状の生息環境を生物たちに提供し続けていた薪炭林のローテーション管理が機能しなくなってから50年程が経過していますが、経済的収益を上げるべく育成される人工林で、草原由来の動植物に好適な生息環境を恒常的に提供し続けることができれば、素晴らしいことではないかと考えます。
(2).針葉樹の巨木の杜
かつて日本の森林には巨木と呼ばれる木が多数ありましたが、今ではその姿を見かけることはほとんどできなくなりました。
昨今、歴史的建造物の修復に使用する大径木の国内での調達ができず、海外からの調達に頼っている状況でしたが、世界的な森林資源の枯渇によりそれも難しくなってきております。青梅の森では、歴史的建造物の修復等への材の供給も視野に入れた針葉樹の巨木の森を育成していきます。
後述する常緑広葉樹の極相林とはまた違った、厳かな清清しさを持った森林になると考えられます。
(3).新たな里山文化を支える落葉広葉樹の薪炭林
青梅の杜の林縁部に建設されるパン工房の石窯の燃料、また、これから普及を目指す薪ストーブ用燃料等、バイオマス燃料の供給の為に落葉広葉樹林の一部を20年周期の萌芽更新の亜高木林として管理していきます。循環可能で、低コストでありながら、景観的には限りなく懐かしさを感じさせ、さらに高い生物多様性をも維持するなど、マルチ機能を発揮する森であります。バイオマス発電の燃料補給の基地ともなり、モザイク状に多様な環境を提供する明るい林が、多くの生物の避難場所ともなっていきます。
(4).健全な生態系と生物多様性の維持、復元の為に核となる落葉広葉樹の高木林
放置され、高齢化し、萌芽更新が難しくなった、かつての薪炭林は、失われてしまった原生林に由来する動植物の生育場所になり得る場所であります。そうした林分の一部をそれら生物の生育場所として、基本的には、保全、しかし、遷移を止める為の、最低限の人為を施し、健全な生態系と生物多様性を維持、復元する為に核となる林分へと誘導していきます。同時に、巨木になり得る樹種、個体を選定、100年後200年後に、歴史的建造物へ材を供給することも念頭におきつつ選択的下刈り、後継となる稚樹の保護などを行ないます。健全な生態系と生物多様性の維持、復元を目的とするのですから、枯れ木、うろのある木、倒木なども当然、保護されます。森林の更新は、歴史的木造建造物の修復などに利用可能な広葉樹を伐採、搬出、跡にできるギャップに育つ苗を育てる天然更新を目指します。美しい景観と生物多様性、健全な生態系が保たれる優しく暖かな森であります。
(5).地球温暖化に対処する為の常緑広葉樹による実験的薪炭林
この地域の極相林である常緑広葉樹林は、成立後、最も安定した森林になっていくと思われます。管理するには、最も容易な林分であり、今後温暖化が進行すること、二酸化炭素削減要求がさらに高まることから、温暖な環境に適応しやすいこの林分は、二酸化炭素削減・固定の為のパイロット・フォレストとなっていくことが考えられます。
(6).鬱蒼として森閑とした常緑広葉樹による極相林
森の核心部に広がる水源を護るイメージの神秘的な照葉樹林。自然への畏敬、畏怖の気持がごく自然に呼び覚まされる鬱蒼としていながらどこか清らかな極相林。そこには、アラカシ、シラカシなどの大木とともに、スギ、ヒノキ、さらにモミ、カヤなどの針葉樹の巨木も共生します。
奥深い自然を必要とする生物たちのサンクチュアリになっていきます。